オペラ・声楽店

そんなマレの、現在唯一のオペラ全曲録音がこれである。フランス・バロック・オペラは、台本だけ読んでも筋は解らない場合が多い。神話や古典の名場面を台本として翻案している場合が多く(特にリュリ作品)、元になった話のあらすじくらいは解らないと、台本は理解できないことになる(当時の聴衆には必須知識の範囲内だったことだろう)。だから、解説がつくＣＤは、たいへんありがたいのである。

私は、フランス・バロック・オペラ、とくにトラジェディ・リリクを初めて聴くのなら、リュリ作品よりもこのＣＤを薦めたい。というのは、上述のような事情のなかで、「アルシオーヌ」の台本は、現代人からみても、ついていけるのが第一の点。第二に感動的なラストシーンのあとに器楽のみの長大なシャコンヌで終わるのだが、それが感動を何倍にもする点である。