オペラ・声楽店

　お勧めは、やはり『ダフニスとクロエ』です。第一印象は、他に例を見ないほど不思議な雰囲気を持った演奏に感じました。以前お勧めしたデュトワ＆モントリオールの演奏と比べても、同じダフニスにもかかわらず、これほどまでに全く別の曲に聞こえる演奏も珍しいと思います。単純に神秘的というよりは、より深く原始的な宗教音楽にも通じるような感じがします。いわゆるシャーマニズムといったものの類ではないでしょうか。

　正直、全体的な雰囲気としては、宗教がかったような演奏であるがゆえに、好みが分かれるところかもしれませんね。それでも、ミュンシュの音楽には、他にはない魅力があることは確かです。私自身、最初のうちは、理解しがたい演奏に思っていたのですが、聞き込めば聞き込むほど、ミュンシュの摩訶不思議な世界もだんだん面白く聞こえてきたのも事実です。もしかすると、ミュンシュの卓越した表現世界はかなり玄人向きなのかもしれませんね。

そのテクニックもさることながら、これほど変わった奏法は見たことがない。ピアノの先生ならば絶対に勧めない奏法である。驚くほど長い指をまっすぐに伸ばしたまま、どんなに速いパッセージも平然とした顔で弾きこなしてしまう。